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具体例・数字・エピソードで伝える|事例や実績が伝わる書き方

導入事例をまとめていて、最後に「業務が効率化し、大きな成果につながりました」と書いたとします。間違いではありません。それでも、この一文を読んだ見込み客は、頭の中で「成果とは、つまり何が起きたのか」を想像することになります。書き手には成果の中身が見えていても、読み手には見えていません。事例ページや実績紹介は、この想像で埋める場面がとくに生まれやすい文章です。

具体例・数字・エピソードは、表現の才能というより、読み手の頭に書き手と同じ材料を置くための道具です。今回は、その置き方と、置きすぎないための線引きを見ていきます。

評価語の中身は、読み手の想像に渡してしまう

事例ページでよく使われるのが、「効率化」「最適化」「大幅な改善」といった評価の言葉です。次の一文を見てください。

> 川辺屋さまでは、予約の受付と当日のご案内を別々の帳簿で管理していましたが、これらを一つにまとめたことで業務が効率化し、大きな成果につながりました。

誤字はありません。一読すると、すらすら流れていきます。それでも、文末の「業務が効率化し、大きな成果につながりました」だけが、中身の空いた評価語のまま残っています。前半に「別々の帳簿を一つにまとめた」という具体的な変化が出ているのに、その結果として何が起きたのかは、読み手が自分で思い描くことになります。評価語は、書き手の手応えは伝わっても、読み手の頭には絵が残りません。

> 川辺屋さまでは、予約の受付と当日のご案内を、別々の帳簿で管理していました。これらを一つにまとめてからは、スタッフが二冊を照らし合わせる手間がなくなり、当日の行き違いも減っています。

施策はそのまま、文末の評価語を外しました。代わりに置いた「二冊を照らし合わせる手間がない」「行き違いが減る」は、新しい成果を足したのではありません。二冊を一冊にまとめれば必ずそうなる、という中身を評価語の代わりに書いただけです。成果という言葉が指していたものを、読み手にも見える形に戻しました。

抽象的な評価を、自分が測った数字で支える手もあります。「導入の効果として、お客様対応の満足度が大きく向上しました」と書くと、「大きく」がどのくらいかは読み手に測れません。5%が6%なのか、50%が80%なのかで、受け取り方はまるで違います。これを「導入後のアンケートでは、『対応に満足した』と答えた方が、前年の58%から81%に増えました」と直すと、評価語の中身が見えます。足したのではなく、手元にあった数字を読める形で出しただけです。

数字は、単位と期間と比べる相手があって意味になる

数字を入れると具体的になる、とよく言われます。ただ、数字だけを置いても、読み手は意味を結べないことがあります。

> 累計の利用件数は12,000件を超えました。これはサービス開始からの1年間での数字です。

一文目で12,000件を受け取った読み手は、それが多いのか少ないのか判断できないまま読み進めます。そして二文目で「1年間の数字だ」と知り、もう一度さかのぼって意味を確かめます。数字とその前提が離れているぶん、読み手は一度立ち止まります。

> サービス開始からの1年間で、累計の利用件数は12,000件を超えました。

数字も期間も、もとの文にあった同じ材料です。あとから足していた期間を数字の前に寄せ、一文にまとめました。これで読み手は、数字とその前提を同時に受け取れます。数字は、いつまでの・何と比べた・どの単位の数字かがそろって、はじめて大きさになります。

割合なら、起点と終点の両端をそろえると伝わります。さきほどの数字も、「81%」だけより「前年の58%から81%へ」のほうが、どれだけ動いたかが見えます。数字を出すときは、それが何からいつまでで動いたのかを近くに置いてあげてください。

数字が多いほど伝わるわけではない

数字は強い材料です。強いからこそ、並べすぎると、いちばん伝えたい数字が他に埋もれます。

> 木村金属さまの導入事例です。昨年度の検品記録は全部で12,480件、そのうち再検査になったものが214件、記録の不備による差し戻しが68件あり、これらをタブレット入力に切り替えた結果、差し戻しがほぼなくなりました。

本当に伝えたいのは、最後の「差し戻しがほぼなくなった」ことです。けれど読み手は、文頭から12,480件・214件・68件と三つの数字を続けて受け取り、どれを覚えておけばいいのかを自分で選ぶことになります。主眼にたどり着くまで、関係の薄い件数を抱えて進むのです。手元の集計をそのまま貼ると、こういう並べ方になりがちです。

> 木村金属さまでは、検品記録をタブレット入力に切り替えてから、記録の不備による差し戻しがほとんど起きなくなりました。差し戻しは昨年度の68件から、今ではごくわずかです。

主眼を先に言い切り、それを支える68件だけを残しました。総件数の12,480件と再検査の214件は、差し戻しが減ったという主眼を支えないので、脇に置いています。数字は、主眼を支える一つに絞ると、かえって強く残ります。 数字を作ったわけでも消したわけでもなく、順番を変えて主眼と支えの数字だけを前に出しただけです。

丸め方も、文章の一部です。事例の読み手が知りたいのは、だいたいどのくらい変わったかという目安であることが多いものです。「導入後、月次の締め作業は平均3時間42分まで短縮しました」と分単位で書くと、読み手はこの42分に意味があるのかを一瞬考えます。「およそ3時間半まで短くなりました」とすれば、目安として素直に受け取れます。逆に、料金や締切のように正確さが要る数字なら、丸めません。何の数字かで、見せ方を選びます。

エピソードは、一場面だけ切り取る

導入前の苦労を語るエピソードも、読み手の頭に絵を置く道具です。ただ、起きたことを時系列で全部書き込むと、読み手は要点までずいぶん待たされます。

> 導入前、川辺屋さまでは朝の予約確認に時間がかかり、繁忙期には電話が重なって対応が追いつかず、スタッフが交代で早朝から出勤して帳簿を見直し、それでも当日に二重予約が起きることがありました。

伝えたい核は、「二重予約が起きていた」ことです。けれど読み手は、早朝出勤や交代といった経緯を一通り受け取ってから、ようやく問題の中心にたどり着きます。場面を盛り込むほど、読み手は「で、何が問題だったのか」を最後まで保留して読むことになります。

> 導入前の川辺屋さまでは、繁忙期に予約の確認が追いつかず、同じ予約を二重に受けてしまうことがありました。

長いエピソードから、問題の核心が見える一場面だけを残しました。中身はすべて、もとの文にあった要素の一部です。エピソードは、盛るのではなく、問題が見える一瞬に絞ると伝わります。

材料は、読み手に近い言葉で選ぶことも大切です。「業務プロセスの最適化により、予約管理の属人化を解消しました」は、書き手の中では中身が決まっていても、読み手は自分の現場に当てはめて想像しなければなりません。「これまで担当者しか把握していなかった予約の埋まり具合を、フロントの誰もが同じ帳簿で確認できるようになりました」とすれば、同じ業種の見込み客が、自分の現場として読めます。中身は同じで、変えたのは言い表す角度だけです。

具体にしようとして、盛らない

ここまで読むと、抽象語はすべて数字や具体例に置き換えたほうがよい、と思えるかもしれません。けれど、具体化を「材料を足すこと」と取り違えると、別の読みにくさが生まれます。

成果を強く見せたくて、評価語の上にさらに形容を重ねると、かえって中身がぼやけます。「めざましい効果を発揮し、劇的な改善を実現しました」と並べても、読み手の頭に絵は増えません。足すべきは形容ではなく、何が起きたかという事実です。具体化とは、評価語を増やすことではなく、評価語が指していた事実に置き換えることです。

数字も、なくてよい場面では無理に作らないほうが安全です。数えても意味の薄いことまで数字にすると、事例ページが分析レポートのように見えてきます。学習塾のステップ学習会の事例で、生徒の表情が明るくなったという声を伝えたいなら、そこは数字より、保護者が実際に書いた一言のほうが届きます。何でも数字にするのではなく、その材料がいちばん伝わる形を選びます。

直す手がかりは、書いた一文を読み返して、読み手が同じ絵を思い浮かべられるかを想像してみることです。評価語で閉じていたら、その中身を一つ書き添える。数字を置いたら、単位と期間と比べる相手がそろっているかを見る。エピソードが長ければ、問題が見える一場面に絞る。これだけで、事例や実績はぐっと伝わりやすくなります。次回は連載の最後、ここまでの直しをどの順番で見直すかという推敲の順番を決めるを扱います。

出す前に、さっと校正

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