一文が長すぎる文章を短くする|意味を減らさず読みやすくする方法
社内で配られる研修や制度のお知らせに、こんな一文があったとします。
> 今年度から研修制度が新しくなり、対象となる方が部署ごとに異なるため、まずは人事から各部署の担当者に対象者の一覧をお送りし、そのうえで受講期限のご確認をお願いします。
読めない文ではありません。ただ、読み手は制度が新しくなったこと、対象が部署ごとに違うこと、人事が一覧を送ることを次々に受け取り、最後の「ご確認をお願いします」で、ようやく自分が何をすればいいのか分かります。一文を抱えている間ずっと、用件を保留したまま読む作業が続きます。一文が長い文章の読みにくさは、ここで生まれます。
長い文がいつも悪いわけではありません。説明文では、ある程度の長さが要る場面もあります。それでもメールやお知らせのように、すばやく用件を受け取ってほしい文章では、一文の長さがそのまま伝わりやすさに響きます。
読みにくいのは、字数ではなく抱える役割の多さ
長い文を直すとき、まず字数を減らそうとしがちです。けれど、読みにくさの原因は字数ではなく、一文の中で処理する役割が多すぎることにあります。 さきほどの文には、制度変更の背景、対象者の違い、一覧の送付、確認の依頼が一度に入っていました。
役割が混ざったまま長く続くと、読み手は文末の述語に着くまで「結局どうなるのか」を保留したまま読みます。文頭の話題と文末の述語が離れているほど、覚えておく負担も重くなります。だから、字数を削るより先に、その一文がいくつの仕事をしているかを見ます。
結論を先に出し、述語ごとに分ける
長い文を短くする手がかりは、文末の述語を数えることです。「新しくなる」「異なる」「送る」「確認する」のように、動きを決める言葉が一文にいくつも並んでいたら、それぞれが別の文になれる合図です。さきほどの研修の文を、述語ごとに分けてみます。
> 各部署の担当者の方に、受講期限のご確認をお願いします。今年度から研修制度が新しくなり、対象となる方が部署ごとに異なります。対象者の一覧は、人事から担当者あてにお送りします。
意味はほとんど変えていません。変えたのは運ぶ順番と分け方だけです。一文目で担当者にしてほしいこと、二文目でその背景、三文目で対象者一覧の送付を伝えています。
どの文を先頭に置くかは、読み手がいちばん早く知りたいことで決めます。お知らせなら結論、依頼なら相手にしてほしいこと、報告なら結果です。迷ったら、相手が最初に抱く疑問から書き始めます。
もうひとつは、結論を先に出すことです。次の依頼文は、してほしいことが文末に置かれています。
> 経費精算の運用が変わることにともない、新しい申請先のフォルダがこれまでと異なりますので、6月2日までに各自のブックマークの登録先を変更しておいてください。
丁寧ですが、読み手は理由を抱えたまま「変更しておいてください」を待ちます。先に行動と期限を見せると、こうなります。
> 6月2日までに、各自のブックマークの登録先を変更しておいてください。経費精算の運用が変わり、新しい申請先のフォルダがこれまでと異なるためです。
短く言い切るのは、乱暴に断定することではありません。中心を先に渡してから、理由や条件を添えるだけです。 中心が見えれば、読み手は残りを落ち着いて受け取れます。
分けたあとに、近いものは戻す
役割ごとに分けると、今度は短い文が並んで、ぶつ切りに感じることがあります。短くすること自体が目的になると、かえって読みにくくなります。たとえば「研修は来週月曜から始まります。会場は3階の会議室です。開始は午後2時を予定しています」と刻むより、関係の近いものは「研修は来週月曜から、3階の会議室で午後2時に始まる予定です」とまとめたほうが自然です。一文が運べる情報量は、字数ではなく情報どうしの近さで決まります。 いったん述語ごとに分けてから、関係の近い文だけを戻すと、役割の境目が見えてきます。
直す価値があるのは、最後まで読まないと結論が見えない文や、理由・条件・注意が一文に重なった文です。逆に、主語と述語が見えていて関係も近い文は、少し長くてもそのまま読めます。自然さや好みだけで切る必要はありません。狙いは、文を機械的に短くすることではなく、読み手が一度で受け取れる順番に並べ直すことです。
一文が長いと感じたら、まず「この文は何役こなしているか」を見てみてください。役割が三つ以上あれば、結論を先に出して述語ごとに分けるだけで、ずいぶん読みやすくなります。文の骨組みが遠くて読み直しが起きるときは、わかりにくい文章の特徴と直し方も合わせてどうぞ。
出す前に、さっと校正
「この使い方、合っているかな」と迷ったら、書いた文章をLINTOに貼って校正してみてください。誤字や表記のゆれ、読みにくい言い回しまで、無料でまとめて見直せます。メールを送る前、記事を公開する前、SNSに投稿する前のひと確認に、どうぞお役立てください。
この連載の記事 前の回:わかりにくい文章の特徴と直し方 次の回:主語と述語が離れた文を直す LINTO Tips の一覧はこちら。文章力編は順次公開します。