係り受けのねじれとは?修飾語の置き方で誤読を防ぐ
役所からの手続きの案内に、こんな一文が混ざっていることがあります。
> 早めにご連絡いただいた方の手続きを進めます。
誤字はありません。それでも、読んだ人は一瞬考えます。早めに連絡したのは、その方でしょうか。それとも、こちらが早めに手続きを進めるのでしょうか。文だけを見ると、読み方が二つ残ります。
説明する言葉(修飾語)が、どの言葉にかかるのか決まらない状態を、係り受けのねじれと呼びます。 誤字と違って一目では分からず、読み手は文脈に合いそうな読み方を自分で選ぶことになります。前回の主語と述語が離れた文と同じく、読み手をいったん戻して読み直させてしまう型です。
かけたい言葉の近くに置く
係り受けがねじれる一番の原因は、修飾語とかかる先が離れていることです。間にほかの言葉が入るほど、読み手はかかり先を探すことになります。直し方はシンプルで、修飾語は、かけたい言葉のすぐ近くに置きます。 さきほどの文で、早く進めるのがこちらの手続きなら、こう動かせます。
> ご連絡いただいた方の手続きを、早めに進めます。
「早めに」を「進めます」の隣に置いたので、こちらが早く手続きを進める意味だと、迷わず読めます。短い副詞ほど位置で意味が動くので、かけたい言葉を先に決めてから動かすのがこつです。
長い修飾語は、文の外へ出す
日本語は、名詞の前に説明をいくらでも重ねられます。便利な反面、ひとつの名詞に説明を盛りすぎると、読み手は中心の言葉にたどり着くまで、その説明を抱え続けます。
> 窓口の混雑を避けるため来庁の前に持ち物と受付時間をご確認いただける案内ページを公開しました。
この文の中心は「案内ページを公開しました」です。けれど長い説明が前にかかっているため、中心に着くまでが遠くなっています。こういうときは、近づけるより、説明を文の外へ出すほうが確実です。まず中心を短く言い切り、抱えていた説明を後ろから足します。
> 案内ページを公開しました。窓口の混雑を避けられるよう、来庁の前に持ち物と受付時間をご確認いただけます。
情報は減っていません。変えたのは、運ぶ順番だけです。 中心が先に伝わり、「何を公開したのか」と「何を確認できるのか」を別々に受け取れます。案内やお知らせなど、名詞の前に説明がふくらみやすい文で使いやすい直し方です。
読点で足りるか、語順から直すか
修飾語のまとまりは、読点で境目を見せるだけで軽くなることもあります。「届出書に記入された内容を職員が確認します」が詰まって見えるなら、「届出書に記入された内容を、職員が確認します」と読点で区切れば十分です。
ただ、読点は境目を見せる目印であって、構造を作り直す道具ではありません。読み方が二つ残る文は、読点を足しても候補が消えません。
> 初めて来庁される方に窓口でご記入いただく書類をまとめました。
「初めて来庁される方に」が、案内の宛先なのか、書類を記入する人なのかで揺れます。「に」の一文字で、どちらにも読めてしまうのです。こういう文は、読点ではなく、語順を変えるか思い切って分けます。
> 窓口でご記入いただく書類を、初めて来庁される方向けにまとめました。
読点で足りるか、語順から直すか。目安は、読み方の候補が二つ以上残るかどうかです。 一つの境目を見せるだけなら読点で、意味が分かれるなら語順や文の分割で対処します。
どこまで直すか
係り受けの曖昧さは、すべてが同じ重さではありません。少し引っかかっても意味が変わらない文もあれば、読み方が変われば相手の行動まで変わる文もあります。優先して見直したいのは、対象者・料金・期限・条件・例外など、誤読されると困る場所です。
逆に、はっきりさせようとして言葉をすべて別の文にすると、今度は文章が細切れになります。「二階に新しい窓口を設けました。住所変更の手続きは、この窓口で受け付けます」と刻むより、「二階の新しい窓口で、住所変更の手続きを受け付けます」のほうが読めます。かかり先が明確なら、一文にまとめてかまいません。
整えるのは、読みやすく見せるためではなく、書き手が意図した読み方だけを残すためです。 読みにくさを直すことと、好みで語順を変えることは違います。手を入れるのは、読み手が確かに立ち止まる場所だけで十分です。
迷ったら、修飾語を一つずつ見て、「これはどの言葉にかけたいか」を確かめてみてください。決めてから近づける。長ければ外へ出す。読点で足りなければ分ける。この順で見ていくと、ねじれは見分けやすくなります。次回は、説明の中にさらに説明が入り込む入れ子構造の文をほどくを扱います。
出す前に、さっと校正
「この使い方、合っているかな」と迷ったら、書いた文章をLINTOに貼って校正してみてください。誤字や表記のゆれ、読みにくい言い回しまで、無料でまとめて見直せます。メールを送る前、記事を公開する前、SNSに投稿する前のひと確認に、どうぞお役立てください。
この連載の記事 前の回:主語と述語が離れた文を直す 次の回:入れ子構造の文をほどく 文章力編の入口:わかりにくい文章の特徴と直し方 LINTO Tips の一覧はこちら。