LINTO Tips

同じ言葉の重複を減らす|新しい話の入口が見える文に直す

公民館の水彩サークル「土曜スケッチの会」が、新しい仲間を募るチラシに、こんな案内を載せていました。

> 土曜スケッチの会では、初心者の方も歓迎しています。これまで絵を描いたことがない初心者の方も多く、初心者向けに道具の使い方から説明します。

誤字はありません。言いたいことも伝わります。それでも、二文目、三文目と進むたびに、読み手は「これはさっきと同じ人たちの話か、それとも新しい話か」を確かめながら読むことになります。「初心者」という同じ言葉が三度続くので、どこから新しい情報が始まるのかが、その言葉に隠れて見えにくいのです。重なりをほどいてみます。

> 土曜スケッチの会では、初心者の方も歓迎しています。これまで絵を描いたことがない方も多く、道具の使い方から説明します。

言っている中身は、何も減っていません。歓迎していることも、経験のない方が多いことも、道具の使い方から説明することも、そのまま残っています。変えたのは、一文目で「初心者」を一度だけ立て、二度目以降は言い換えずに同じ対象を受けただけ。重ねていた言葉を外すと、新しい情報の入口が見えやすくなります。同じ言葉の重複を減らすとは、すでに出た話と新しい話の境目を、読み手に見える形に戻すことです。

同じ言葉が続くと、新しい話の入口が見えなくなる

同じ相手の話なのだから、同じ言葉で受けるのは、書き手には自然なことです。けれど読み手は、言葉が出てくるたびに、それが前と同じものを指すのか、新しく持ち出されたものなのかを、いったん見分けます。同じ語が近くで重なると、その見分けに毎回少しずつ手が取られます。

さきほどのチラシで三度目の「初心者向けに」まで来ると、読み手は新しい条件を待っているのに、出てくるのは前と同じ話です。新しく伝えたい「道具の使い方から説明する」が、繰り返しの言葉に埋もれて、肝心の案内として立ちにくくなっていました。

直し方は、言い換えを探すことではありません。一度立てた言葉は、二度目からは省くか、同じ言葉のまま軽く受けるだけで足ります。無理に別の言い方を持ち出すと、今度は「初心者」と「未経験者」が同じ人か別の人かで、読み手がまた迷います。重なった分だけ削れば、入口は見えてきます。

同じ語尾が並ぶと、どれが要点か見えにくい

重なるのは、名詞だけではありません。文末の形がそろうと、どの文が大事なのかが見えにくくなります。同じ会の、体験教室の紹介文です。

> この教室では、季節の草花をゆっくり描けます。絵の道具は無料で借りられます。描いた作品は、年に一度の作品展に出せます。

「描けます」「借りられます」「出せます」と、同じ形の語尾が三つ続きます。一つずつは正しい文です。けれど三つが同じ調子で並ぶと、どれが教室のいちばんの魅力なのかが、すべて同じ強さに見えて伝わりにくくなります。読み手は、三つを並べて読み比べることになります。

> この教室では、季節の草花をゆっくり描けます。絵の道具の貸し出しは無料で、描いた作品は年に一度の作品展に出せます。

近い役割の二つを一文にまとめ、語尾の繰り返しを解きました。「借りられます」は「貸し出しは無料で」と名詞でいう形に役割を変えただけで、無料で道具を使える事実も、作品展に出せる事実も残っています。最初の一文に体験の中心を置き、後ろに支える事実を添えると、どこが要点かが見えてきます。同じ語尾の連続は、近い役割の文をまとめ、述べ方に強弱をつけると、要点が浮かびます。

言い換えても、同じ意味なら重なっている

言葉そのものは違っても、同じことを繰り返している重なりもあります。

> どなたでも参加できます。初めての方も大歓迎で、経験はいっさい問いません。

「どなたでも」「初めての方も」「経験は問いません」は、言い方を変えているだけで、同じことを三度言っています。読み手は新しい条件が続くのを待つのに、出てくるのは言い直しなので、肩透かしのまま進みます。三つ目は前の二つから当然読み取れるので、折りたためます。

> どなたでも参加できます。これまで絵を描いたことがない方も、どうぞお気軽に。

残した二文は、「誰でも歓迎」と「未経験の人ほど安心して」という別の役割を持っています。誘う気持ちも丁寧さも減らさず、言い直しの分だけ軽くなりました。言葉を変えても中身が同じなら、それは飾りではなく、重なりとして読み手の手間になります。

消しすぎない。残したほうがよい繰り返しもある

ここまで読むと、同じ言葉はとにかく避けたほうがよい、と思えるかもしれません。けれど、繰り返しを嫌って言葉を指示語に置き換えると、かえって読み手に推測を求めることがあります。

> 見学は、第二・第四土曜の午後にできます。その時間でしたら、いつ来ていただいても大丈夫です。

「その時間」が、午後を指すのか、特定の土曜を指すのか、読み手は一瞬だけ前に戻って確かめます。繰り返しを避けて指示語にした分、指す先を探す手間が生まれています。「土曜の午後でしたら、いつ来ていただいても大丈夫です」と、すでに出した言葉にそのまま戻すと、迷いどころがなくなります。繰り返しでも、指す相手がはっきりしているほうが、読み手は戻らずに済む場面があります。

期限や条件のように、間違えると困るところも、強調のための繰り返しは無理に削らないほうが安全です。「お申し込みは前日まで受け付けます。それ以降はご遠慮ください」は、「それ以降」でも意味は取れますが、当日はもう間に合わないという線引きが、急いで読む人には弱く見えます。「前日を過ぎてのお申し込みは、お受けできません」と「前日」をもう一度出すと、締切の境目がはっきりします。直すのは、新しい話をぼやかす重なりだけです。読み手が迷う重なりと、読み手を助ける繰り返しは、別のものです。

同じ言葉が近くで二度三度と続いていたら、その言葉が毎回同じものを指しているか、新しい話を運んでいるかを見てください。同じものなら、まとめるか削るか役割を変えるかで、新しい話の入口が見えてきます。次回は、重なりだけでなく、なくても意味が変わらない言葉そのものを見直す削れる言葉を削るを扱います。

出す前に、さっと校正

「この使い方、合っているかな」と迷ったら、書いた文章をLINTOに貼って校正してみてください。誤字や表記のゆれ、読みにくい言い回しまで、無料でまとめて見直せます。メールを送る前、記事を公開する前、SNSに投稿する前のひと確認に、どうぞお役立てください。

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