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「てにをは」で意味が変わる|助詞一字で案内の条件を正しく伝える

何かの案内を書いていると、中身は決まっているのに、最後の一字でどう伝わるかが変わる場面に出会います。「3月5日まで」と書くか「3月5日までに」と書くか。一字を足すか足さないかで、読み手が動く日がずれてしまうのです。

こうした一字は、助詞と呼ばれる言葉です。「は」「が」「を」「に」「で」「の」「まで」といった、単語のあいだに置く短い言葉のことです。誤字ではないので見直しでも素通りしやすいのですが、助詞は言葉どうしの関係を読み手に伝える標識です。その向きが一字に託されているので、一字がずれると、書き手の思った向きと読み手の受け取る向きがすれ違います。今回は、講座やイベントの案内でとくに起きやすい助詞を見ていきます。

「まで」と「までに」で、締切が変わる

地域セミナーの参加を募る案内に、こんな一文があったとします。

> 会場の都合がありますので、3月5日まで参加されるかどうかをお知らせください。

ここに明確な誤字はありません。お願いの文としてもていねいです。それでも、3月5日まで連絡をし続けるようにも、3月5日が返事の締切のようにも読めます。読み手は「5日のうちに一度出せばいいのか」「5日までずっと連絡し続けるのか」を、どちらか自分で決めることになります。

直すのは、助詞の一字だけです。

> 会場の都合がありますので、3月5日までに参加されるかどうかをお知らせください。

日付も、お願いの内容も、ていねいさも変えていません。「まで」を「までに」にしただけで、3月5日が返事の締切だという条件がはっきりします。「まで」はそこまで続く期間を、「までに」はそこで区切られる期限を表します。 締切や申し込み、支払いのように、読み手の行動が日付に結びつく案内では、この一字で動く日が決まります。「まで」と「までに」が混ざっていないか、一度見てみてください。

「は」と「が」で、初耳か続報かが変わる

もうひとつ迷いやすいのが「は」と「が」です。新しい教室を初めて知らせる告知に、こんな一文があったとします。

> みなみ公民館では、来月から朝の体操教室は始まります。

これも誤りではありません。けれど、初めて知らせる教室を「は」で受けると、すでに一度話題に出た教室の続報のように響きます。読み手は一瞬、「どの体操教室の話だったか」と、知っているはずの情報を探してしまいます。

> みなみ公民館では、来月から朝の体操教室が始まります。

「は」を「が」に変えただけです。開く場所も時期もていねいさもそのままで、初めて知らせる新しい教室だという運び方だけをそろえました。「は」はすでにある話題を引き受け、「が」はこれから出す主役を立てます。 「先日ご案内した体操教室は、定員に達しました」のように、すでに知らせたものを受けるなら「は」が自然です。逆に、まだ知らないものをいきなり「は」で受けると少し唐突に響くので、その言葉を読み手がもう知っているかで選ぶと迷いにくくなります。

相手なのか、対象なのか、置き場所なのか

「は」や「まで」ほど目立たなくても、案内文でそっとずれやすい助詞があります。動作の向きを示す「を」と「に」、場所を示す「で」と「に」です。

受付の案内に「ご不明な点は、当日の係を遠慮なくおたずねください」とあると、「係を」は係の人を探す、見つける、という動作のようにも読めます。たずねる相手を示すなら、「当日の係に遠慮なくおたずねください」。「を」を「に」に変えただけで、誰に聞けばよいのかが迷わず伝わります。「を」は動作の対象を、「に」は向かう相手や到達点を示します。

「で」と「に」も、場所の見せ方が違います。「アンケート用紙は、入口の台で置いています」と書くと、その場所で何かをしている感じが出て、用紙のある場所が一瞬ぼやけます。置いてある場所を伝えたいなら、「入口の台に置いています」のほうが素直に読めます。「で」は動作が行われる場所、「に」はものが置かれる場所、と分けると見分けやすくなります。

「の」でまとめると、誰がするのかが隠れる

「の」はとても便利な助詞です。名詞と名詞をつなぐだけで、短くまとまって見えます。ただ便利なぶん、関係を「の」ひとつに押し込むと、誰が何をするのかが見えなくなることがあります。

> 当日は、受付で保護者の確認をお願いします。

「保護者の確認」とだけ書くと、保護者が確認するのか、保護者を確認するのかが決まりません。受付の人が確かめるのか、来た保護者が確かめるのか、読み手は文脈から補うことになります。

> 当日は、受付で保護者の方にご本人かどうかの確認をお願いします。

「の」でひとまとめにしていた関係を、誰に何を確かめてほしいかが分かる形に戻しました。受付で確認するという中身は変えていません。「の」が続いて動作が見えにくくなったら、いったん文に戻して、誰が何をするのかを言葉にすると関係がはっきりします。 すべての「の」を消す必要はなく、動きが隠れた「の」だけほどけば十分です。

短くしようとして、助詞を抜きすぎない

案内を引き締めようとして、助詞を省きたくなることもあります。けれど抜きすぎると、今度は文が硬くなり、かえって読み手に補わせてしまいます。

> 参加費当日お支払い、お釣りのないようご用意ください。

短くは見えますが、「参加費当日お支払い」は箇条書きのように硬く、いつ誰が払うのかを読み手が補うことになります。

> 参加費は当日お支払いいただきます。お釣りのないよう、ご用意ください。

省いていた「は」を補い、支払いのお願いと用意のお願いを二文に分けました。当日に支払うという条件も、ていねいさも変えていません。掲示のタイトルやボタンなら助詞を省いても読めますが、本文では助詞が関係を支えます。

気をつけたいのは、これは語尾や言い回しを好みでそろえる話ではないことです。同じ意味の助詞をどちらに統一しても、読みやすさは変わりません。見直したいのは、締切や相手や置き場所のように、一字で読み手の受け取り方が変わる場所だけです。直すときは、一字をにらむより先に、誰が主役で、何が相手で、どこまでが期限なのかを決めると選びやすくなります。次回は、ひとつの述語をいくつもの文で使い回したときに起きる読みにくさを見ていきます。

出す前に、さっと校正

「この使い方、合っているかな」と迷ったら、書いた文章をLINTOに貼って校正してみてください。誤字や表記のゆれ、読みにくい言い回しまで、無料でまとめて見直せます。メールを送る前、記事を公開する前、SNSに投稿する前のひと確認に、どうぞお役立てください。

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