読点の打ち方|息つぎではなく意味の切れ目で打つ
手書きのレシピカードや、家族に残す作り方のメモに、こんな一文を書くことがあります。
> 温めた牛乳に溶かしたバターを加えてよく混ぜます。
誤字はありません。それでも、読んだ人は一瞬迷います。「溶かした」がかかるのは、牛乳でしょうか、バターでしょうか。バターを牛乳に溶かしてから温めるのかな、と読み筋が割れて、頭の中でもう一度結び直すことになります。読点を一つ置くと、迷いは消えます。
> 温めた牛乳に、溶かしたバターを加えてよく混ぜます。
「温めた牛乳」と「溶かしたバター」という二つの説明の境目に、読点を一つ入れただけです。言葉も順番も情報も変えていません。それでも、何を温め、何を溶かしたのかが、読みながら決まります。読点は息つぎの印だと習った人も多いと思いますが、ここで働いているのは音の間ではなく、言葉のかかり先を一つに絞る目印です。
息つぎではなく、意味の切れ目で打つ
読点を「声に出すとき息を吸う場所」と考えると、書き言葉ではうまくいかないことがあります。黙って読む文章では、読点は音の間ではなく、意味のまとまりの切れ目を見せる記号として働くからです。
> 粗熱がとれたら冷蔵庫で30分ほど冷やし固まったら食べやすい大きさに切ります。
読めます。ただ「冷やし固まったら」がひと続きの言葉のように見えて、どこで「冷やす」が終わり、どこから「固まったら」という次の条件が始まるのか、切れ目を一度探すことになります。
> 粗熱がとれたら冷蔵庫で30分ほど冷やし、固まったら食べやすい大きさに切ります。
動作の切れ目に、読点を一つ置いただけです。手順も言葉も順番も変えていません。読点は、動作や条件がここで切れますと読み手に見せるための区切りです。 前から順に読んで、迷わず次へ進める位置に入れると、手順書は一度で頭に入ります。
並んだものは、区切りを見せる
材料や手順を並べて書くとき、区切りの読点が抜けると、別々のものが一つにくっついて見えます。
> ボウルに卵と砂糖牛乳を入れて泡立て器で混ぜます。
「砂糖牛乳」が一つの材料のように見えて、入れるのは何種類なのかを、読み手は一瞬数え直します。
> ボウルに卵と砂糖、牛乳を入れて泡立て器で混ぜます。
並んでいる材料の区切りに、読点を一つ足しただけです。材料も数も変えていません。並列の読点は、いくつのものが並んでいるかを一目で見せます。 「AとB、C」のように、つなぎの言葉だけでは境目がはっきりしないところに入れると、読み手は数を確かめずに先へ進めます。
多すぎると、かえって途切れる
読点は足りなくても読みにくいですが、息つぎのつもりで打ちすぎると、今度は別の読みにくさが出ます。
> 沸騰したら、火を弱めて、あくを取りながら、10分ほど、煮ます。
一つひとつの言葉のあとで小さく止められて、本来はひと続きの「火を弱めてあくを取りながら煮る」という動作が、細かく分断されます。読むたびに、意味のない場所で立ち止まることになります。
> 沸騰したら、火を弱めてあくを取りながら10分ほど煮ます。
言葉は一つも変えず、読点を四つから一つに減らしました。意味の切れ目である「沸騰したら」の後だけ残し、息つぎのための読点を外しています。読点の数は、まとまりの切れ目の数で決まります。 多いほど親切なわけではなく、一つの動作の途中に入れた読点は、かえって流れを止めてしまいます。
読点で直せない読みにくさもある
読点は便利ですが、できることには限りがあります。読点をどこに置いても解決しない読みにくさは、別の直し方が要ります。
> しょうゆとみりんを大さじ2杯入れます。
大さじ2杯が、しょうゆとみりんを合わせた量なのか、それぞれの量なのかが決まりません。ここで「しょうゆとみりんを、大さじ2杯入れます」と読点を打っても、合計か各々かは残ったままです。
> しょうゆとみりんを大さじ2杯ずつ入れます。
直すには「ずつ」という言葉を一つ補う必要がありました。分量や数の配分が曖昧なときは、読点では切れず、言葉を足して確定させます。 読点で直るのは、言葉のかかり先や切れ目を見せれば済む読みにくさです。読み手が中身そのものを推測してしまう文は、読点の役目の外にあります。
直す前に、その読みにくさがどこで切れるか分からないものか、中身が決まらないものかを見分けると、手の入れ方を選べます。前者なら読点、後者なら言葉を補う番です。一方で、意味がきちんと取れる文の読点まで、見た目をそろえようと足したり消したりする必要はありません。手を入れるのは、読み手がかかり先や切れ目で確かに迷う場所だけで十分です。次回は、「が」と「を」のような「てにをは」で意味が変わる場面を見ていきます。
出す前に、さっと校正
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